TATICS

​山岳救助・捜索におけるタクティクス

情報収集の徹底

 

依頼者やご家族の同意の上、情報の収集を徹底して行います。特に行方不明者の性格、登山経験、登山の方向性、装備の内容、家族構成、遭難当日の天候、遭難前後の天候、SNS利用の有無などから、登山中の行動の特性を読み取るよう努めます。
またより詳細な行動の把握のため、山仲間や親しいご友人などへの聞き取りを行うこともあります。

 

捜索状況の視認化と共有

 

捜索の状況を視認化します。特に捜索活動中の撮影、GPSによる歩行ログの記録、文書による捜索報告書を毎回作成し、捜索依頼者と共有します。
各県警本部を始めとした行政機関の山岳救助組織と捜索状況の情報を共有します。

 

ドローンによる捜索

 

現場の状況により、ドローンの使用の有効性を判断します。しかし、遠距離によるドローン撮影から得られた映像の解析には多大な労力を要するため、いたずらにドローンに頼るのは賢明ではありません。ドローンによる捜索が有効な場合は、管轄行政の許可の下、できる限り発見の可能性が高い現場付近まで機体を持ち込み、低空飛行による撮影を行い、行方不明者や所持品の発見を模索します。捜索者は多くの場合、ドローンを携行しています。

 

有効的な捜索のための研究や研修

 

過去の遭難事例の研究、各山域の調査を日々行っています。
遭難者が登山道の上にいることは基本的にはあり得ません。特に行方不明者の多くが沢の中で発見されることが多く、捜索には沢登りの経験と技術が必要となります。当組織では、捜索に必要とする技術研修を定期的に行なっています。一定の登山経験、およびクライミング能力を持つ隊員のみが捜索に出動いたします。

 

捜索犬の利用について

 

行方不明の現場の状況によっては、当チームでは捜索犬を出動させます。

山岳での行方不明者の捜索に使われる犬は、災害現場などでの救助犬とは違う役割を求められます。

災害現場などでは比較的狭く限定された区域の中にいる生存者や不明者を探すことに重きが置かれます。これには様々に充満した人工的な匂いの中から人間を嗅ぎ分け、これに反応するための日常的な訓練が必要になります。

これに対して山岳の行方不明現場では、どこにいるか分からない不明者を山の中を歩き回った末に見つけ出さなければなりません。山中にて長時間行動できる体力、匂いに反応し追跡する好奇心、ハンドラーとの適切な距離感を保てる行動力が求められます。

よく知られているように犬の嗅覚は、人間の数万倍とも言われています。私達が山の中でよく感じるのは、人間の視覚は必ずしも当てにならないということです。人間の視覚は、網膜に写ったものを脳が認識して初めて記憶として想起されます。逆に言えば網膜に写っていたとしても脳が認識できないことはしばしば起こります。これは私たちが日常的に体験する「見落とし」「見間違い」などが該当します。

例えば混雑した新宿駅で友人を見つけ出すことはとても難しいと言えます。これと同じように、広大な山の中で数カ月前から行方不明の人間を見つけ出すのは大変難しいことです。また行動そのものに危険や困難さがあるような捜索では、人間の意識は安全管理に集中してしまうため、本来の目的である捜索への意識は疎かになってしまうのは否めません。

これに対して嗅覚というのは視覚と異なり雑多な情報に紛らわされにくいため、脳に認識される確率ははるかに高いと言えます。さらにこの嗅覚において人間より優れる犬を捜索に使うことは非常に合理的と言えます。

しかし実際には、高山に登れる体力が必須であったり、犬では通過が難しい危険個所があったり、数日間にわたる捜索に犬の集中力が続かなかったり、犬に特有の状況を解決せねばなりません。

私たちチームではこれらの点を総合的に補える犬のトレーニングに力を注いでいます。これには犬の素質、ハンドラーの能力、トレーニングの質のすべてを満たす必要があり、一朝一夕にできることではありません。しかし犬の能力が発揮される現場は必ずやってきます。その日のために少しづつですが、私たちは犬たちとともに日々トレーニングを行っています。

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