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1.概要

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2025年9月下旬、ある山岳地域における沢筋の岩壁帯で懸垂下降中の滑落事故が発生した。2名パーティのうち1名は翌日に救助され、もう1名は滑落後所在不明となった。

 

【捜索現場の地形】

 豪雪地帯特有の雪渓により、長い年月をかけて磨かれた極めて急峻なスラブ群と硬い岩質。リスやクラックなどは少なく、所々テラスや階段状の棚状の部分もある。浮石、落石への注意だけではなく、岸壁と雪渓の間には深いシュルンドもあり谷底では雪渓崩落への警戒も必要である。また岩壁の植生は低木や草付きが中心で、植生による強固な支点確保、構築も極めて困難である。

引揚現場へのアプローチ
引揚現場へのアプローチ

引揚現場へのアプローチ
右下の雪渓のシュルンド内部に登攀者Aは転落



2. 発生状況と経緯

【事前計画】

 パーティは複数のスラブ帯が連続する沢筋の岩壁帯を登攀し、尾根へ抜ける計画で入山した。

期間:2025年9月下旬

形態:アルパインクライミング

メンバー:登攀者A、登攀者B

予定ルート:尾根筋を経て岩壁へアプローチ → スラブ帯を登攀 → 中腹のテラスでビバーク → 翌日尾根へ抜け下山

装備:50mロープ、携行ボルト、ドリル、小型カム、ツェルト等

 

【事故経緯】

・スラブ帯上部で行き詰まり敗退を決定

・携行ボルトと細引きで懸垂支点を構築

・周囲に自然支点がなく単点支点で懸垂開始

・下降中に細引きが切断またはほどけ登攀者Aが滑落

・登攀者Bは上部に残置された状態となった




3. 原因分析

【直接原因】

・細引き支点が下降荷重に耐えられず切断または解けた。

 

【背景要因】

・スラブ地形は亀裂が浅く支点構築が困難

・自然支点の樹木が遠く利用困難

・夏〜秋季は脆い草付きや浮石が多く安定性に欠けた




4. 民間・関係者による捜索活動

【公的機関の初動】

・地上隊は早朝に入山したが雪渓周辺が不安定で接近断念

・航空捜索を中心に複数回の目視確認を実施したが発見できず

・翌日以降の航空巡回に捜索エリアを組み込む方針となる

・民間電波探索装置が未使用だったため関係者が民間事業者へ出動を依頼

 

【民間捜索隊による捜索(10月上旬)】

1日目

・民間救助関係者が電波探索・高所作業装備などの投入を検討

・ボルト、スタティックロープ、支点構築ギア等を準備

・転落地点の下部のシュルンド内で登攀者Aを発見するも、現場の状況が困難なため、搬送計画の再検討及び日没までのタイムリミットも迫っており、登攀者Aの二次滑落防止のための固定作業を実施し、装備をデポし下山。

 

2日目

・天候回復を受け民間救助隊が引き上げを実施し、航空機により登攀者Aは収容された。

シュルンド内での引揚の様子
シュルンド内での引揚の様子

 



5. 捜索エリアと発見現場

地形図
地形図

地形図凡例

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)

赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)

✖印:遺体発見地点

緑線:民間捜索チームによる捜索範囲


3Dマップ
3Dマップ

3Dマップ凡例

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が登攀後に計画していた下山ルート

赤線:遭難者が実際にアプローチ及び登攀していたルート

✖印:遺体発見地点

黄緑色線:民間捜索チームによる捜索範囲

赤線:遭難者が実際に登攀していたルートと黄緑色線:民間捜索チームによる捜索範囲が

 同じところを歩いているため線が重なってしまい見づらくなっています。


 

1. 概要

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【捜索現場の地形】

 ・周辺は送電線巡視路が複雑に走り、急峻な尾根・ルンゼや泥質の崩壊地が多く、滑落リ

 スクが高い地形。過去にも滑落事故が発生しており、特に雨天後は足場が悪化する危険箇

 所が点在する。

 

 

2. 発生状況と経緯

・行方不明者は以前業務で訪れた地域に、自家用車で入山。業務目的か私用かは不明。 


・7月13日:車両をダム付近に駐車。


・携帯電話(ドコモ)は14日未明3時頃まで呼出音あり、4時には圏外となる。 


・携帯基地局からの情報あり。 


・16日:会社関係者と警察で巡視路を捜索、ドローン・赤外線カメラによる探索も実施するも手掛かりなし。 


・17日以降:警察・職場関係者・民間捜索チームが連携。 


・7月18日:道路から目視によりザックを発見。その40m上方で遺体確認。巡視路から100mほど滑落したと思われる。

 

 


3. 原因分析

【直接原因】

・巡視路またはその周辺での滑落による致命的外傷と推定。【間接原因】- 巡視路の一部が

 崩壊や不明瞭で危険認識が難しかった。

・気象庁のアメダスによると7月12日の21時ごろに0.5mmの雨を観測。雨天後の泥質による

 足場の悪化。

 

 

4. 対応・捜索活動の記録

・7月14日:車両発見、電話状況から14日未明まで活動の可能性あり。


・7月16日:職場関係者が巡視路を捜索。警察は別ルートを重点的に捜索。雨天により前日まではドローン飛行のみ。


・赤外線ドローン投入も反応なし。


・警察犬により入山地点を特定し重点捜索。


・7月18日:道路からザックを目視 → 直近の急斜面を捜索し、遺体確認。


・警察により現場処理後、捜索終了。

 

滑落現場の様子。斜面下方から上方を見る。
滑落現場の様子。斜面下方から上方を見る。

 

 

5. 捜索エリア

地形図
地形図

2Dマップ凡例

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)

赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)

✖印:遺体発見地点

緑線:民間捜索チームによる捜索範囲


 

3Dマップ
3Dマップ

3Dマップ凡例

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)

赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)

✖印:遺体発見地点

黄色線:民間捜索チームによる捜索範囲

 

1.概要

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【捜索現場の地形】

・本山域は通常、遭難事例が少なく道も比較的明瞭であるが、多数の登山道・支道が存在し、沢沿いや尾根に迷い込むリスクもある。植生は濃く、一部にゴルジュ帯や崖地形が見られ、滑落・転落の危険がある地形となっている。

 

 


2. 発生状況と経緯

・遭難者は2025年6月下旬、麓のバス停付近の南側の登山口から入山。この日、本人のスマートフォンで10時に最後の通信記録と位置情報が確認された。


・その後、連絡が途絶え、同日中に通報・捜索が開始された。位置情報や周辺聞き取り等から、登山口から反対側の北側の登山口へ抜ける予定でおり、迷い込みや不明瞭な尾根ルートへの逸脱が疑われた。


・7月上旬、現地で警察と民間有志の合同捜索により、沢の滝下で遺体を発見。滝上には靴やザックが残されていた。


・遺体の発見された約500m上流には登山道に沢が交差しており、渡渉ポイントとなっている。対岸にはピンクテープがあり登山道の目印となっているが、登山道自体ははっきりとせず、川幅の広い沢沿いに誘導されてしまった可能性が考えられる。

迷い込みポイント・動画

 

 

3. 原因分析

【直接原因】

・滝付近での滑落と推定される。 靴やザックが滝上に残されており、裸足での渡渉中に滑落した可能性が高い。

 

【間接原因】

・地形的に沢への誘導が生じやすく、分かりづらい分岐・踏跡の存在。

 



4. 対応・捜索活動

・6月下旬:通報を受け、警察・消防により初動捜索開始。


・7月:YAMAP、ヤマレコ等の協力により活動履歴や目撃情報の収集。


・ヘリによる上空捜索、警察犬の導入も実施されるが手がかり無し。


・民間有志による現地捜索が複数回行われ、警察とも連携。


・7月上旬民間捜索隊による4日目の捜索により、会社貸与のスマートフォンの位置情報をGoogleアカウント経由で取得。(警察からのGPS 情報の提供あり)


・この情報を元に山頂、西側の沢筋を捜索し、登山道から約200m離れた川の滝壺で滑落遺体を発見。

 


 

5. 捜索エリアと発見現場

地形図
地形図

【地形図・凡例】

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)

赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)

✖印:遺体発見地点

緑線:民間捜索チームによる捜索範囲

 


3Dマップ
3Dマップ

【3Dマップ・凡例】

入山口:S   下山予定地:G

青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)

赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)

✖印:遺体発見地点

黄色線:民間捜索チームによる捜索範囲



 

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