これまでに関わった山岳における行方不明者の捜索・発見事例から、遭難パターンを研究し8つに分類しました。ご自身の遭難予防にご活用ください。

行方不明の具体事例8分類

  1. 「○○名山」などの単独日帰り登山

  2. バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト

  3. 地形的な誤解に端を発する事案

  4. 山菜採りの場合

  5. バリエーションルートでの事案

  6. 雪による埋没の場合

  7. トレイルランニングの場合

  8. 外国人の場合

  9. 追記SNSに関すること


1.「○○名山」などの単独日帰り登山


「○○名山」などの単独日帰り登山

日本100名山や200名山など、全国各地に散在する名山を目指すパターンで、他県からその山を訪れており、その山域に対する概念の把握に乏しいために行方不明がよく起こります。

そのほとんどが単独行動で、日帰りの登山が多いため、一度間違った尾根を下ってしまうと、登り返すことの困難さを敬遠して、そのまま尾根を進んでしまうことが多いです。

樹林が少ない稜線部分で起きることは少なく、下山時の薄暗い樹林帯で誤った尾根を下ってしまうことが多いです。

したがって日照時間の短い晩秋、春先などに起こりやすいです。

日本100名山などでは他の登山者が多いため起こりにくいですが、200名山などでは絶対的登山者数が少ないためにより起こりやすく、さらに目撃情報が少ないことも特徴です。


2.バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト


バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト
バックカントリー初心者によるスキー場コースアウト

近年流行しているバックカントリースキーで起きる事案です。

スキー場ではなく、スキー場コース外へ出て新雪を楽しむスキーヤーやスノーボーダーが増えています。

ゲレンデからコース外へ出るのに必要となる知識は飛躍的に増えますが、経験が追い付いていないために起きる事案が多いです。

バックカントリーのツアーはスキー場のトップから始まることが多いですが、コース外は山岳そのものですので、地形や雪質に対する鋭敏な視点が必要になります。

天候の悪いときや視界が良くないときは行動を控えるためむしろ初心者による事故は起こりにくく、天気のよいときにバックカントリーへ深く侵入しすぎることで事故は起こりやすいです。

またスキー場の立地によっては、一度コースアウトすると山の反対側の地域に出てしまい、二度とゲレンデや駐車場の方面には出られないことがよくあります。

スキーやスノーボードは移動距離が長いため捜索範囲が広がるのも特徴です。

特にスノーボードはスキーに比べて登り返しや水平移動は不得意なため、下ることを選択してしまうことが多いです。

若い世代に多いです。


3.地形的な誤解に端を発する事案


地形的な誤解に端を発する事案
地形的な誤解に端を発する事案

山の地形は「尾根」と「沢」と「それ以外」で構成されています。多くの場合、登山道は「尾根」か「沢」にありますが、そうでない場合もしばしばあります。

「尾根」には多数の枝分かれがあり、また「岩場」や「藪」「倒木」が出てきて登山道が認識しにくくなっていることもよくあります。

「登山道はこの尾根にあるはずだ」「こんなに岩場があるところは登山道ではないはずだ」などの思い込みと、「登山道にはピンクテープがあるはずだ」「ここは登りでは通らなかったはずだ」などの誤解が、道迷いの端緒になります。

全ての登山の教科書には「迷ったらわかっている場所まで引き返すこと」と書いてありますが、実際には「夕暮れが近い」「雨が降っている」「体力的に消耗している」などの理由により、引き返せないことが多いです。

誤った尾根を下ると、登山口よりもはるかに上流の沢に出てしまいます。

日本の渓谷は多雨により急峻になっている地形が多いため、やがて「滝」などで行き詰まり、その滝を避けて急斜面を下っている間に転落してしまうことが多いです。



4.山菜採りの場合


山菜採りの場合
山菜採りの場合

地域により目的の山菜が異なりますが、山菜採りに夢中になり本来戻るべき道路への方向感覚を失ってしまうことにより起こります。

特にネマガリタケ、コシアブラ、ギョウジャニンニクなど、雪国で藪を掻き分けて獲るタイプの山菜採りに起こりやすいです。

お年寄りが好みますので、転倒などの事故も起きやすく、携帯電話なども持っていないことが多いです。


5.バリエーションルートでの事案


バリエーションルートでの事案
バリエーションルートでの事案

登山道ではなく岩稜などの、より難しいルートで山頂を目指す登山に起こるパターンです。

普通は仲間とパーティーを組んで行くことが多いですが、困難さがそれほど高くない場合は単独で挑む登山者もいます。

始めから登山道を目指していないため、アプローチとなる沢やガレ場などで迷い、迷っている間に危険箇所で転落してしまうパターンです。

またルートそのものを単独で登攀中に転落してしまうこともあります。

県警ヘリによる上空からの捜索で見切れない場所にいる場合、長期間の捜索を余儀なくされることがあります。

例:槍ヶ岳北鎌尾根などのバリエーションルート


6.雪による埋没の場合

雪による埋没の場合
雪による埋没の場合

積雪期に滑落や雪崩などで遭難し、その後の降雪で埋没してしまう事案があります。

捜索は雪が溶ける春以降に再開されますが、豪雪地帯では秋以降にずれ込むこともあります。

遭難した場所がわかっていても、その後の融雪や降雨で移動してしまうことが多く、流失した遺留品を下流から探すなど、慎重な捜索をする必要があります。


7.トレイルランニングの場合


トレイルランニングの場合
トレイルランニングの場合

トレイルランニングは近年人口が増加しているアクティビティです。

多くの場合、スマートフォンの地図アプリを利用しているランナーが多いため、一般的には行方不明は起こりにくいと言えます。

しかしスピードを出すために一般的には考えにくい場所で転落し、登山道の外の死角にまで落ちてしまうことが稀にあります。



8.外国人の場合

外国人の場合
外国人の場合

日本の山岳事情に通じていない外国人が、道に迷ってしまうパターンです。

注意喚起や道標が読めないことも原因になると考えられます。

またアメリカやヨーロッパの山々と比べて日本の登山道は蛇行や迷い尾根が多く、また森林限界が高く低灌木が発達しているため、樹林帯で道迷いを起こしやすいと言えます。



9.追記SNSに関すること

このほか、ここ数年で増えているのは、登山のSNSで評価を得ている方が、評価のために無理をしてしまい遭難するパターンです。自分の登山ではなく、他人に見せるための登山を意識してしまった結果でしょうか。周りを気にするあまり、山と向き合うことを忘れてはいけないと思います。山は誰に対しても平等です。常に謙虚に山に向き合っていきたいものです。

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これらの事業者は、必ずしも詐欺とは呼べませんが、実効性は少ないにも関わらず、現場を技術実践や宣伝の場として利用しているだけの場合があります。


捜索を依頼されるご家族は、藁をも掴む気持ちであることは分かりますが、捜索手法の選択にはくれぐれも慎重な判断をされることをおすすめします。過去に先端技術のみで行方不明者を見つけられた事例は極めて少なく、実際に山に入って沢や危険箇所を地道に徒歩で捜索する以外の手法は、実効性を持たない場合がほとんどです。




紛らわしい団体例:


①弊社の組織の名称に似せた団体があります。弊社とは一切関わりはありませんので、ご注意ください。(例:「民間・山岳遭難捜索救助チーム&ネットワーク」)→現在、このブログ掲載後、こちらの団体は、表記を変えて「民間・山岳遭難捜索救助チーム」に変更となっています。「捜索の流れ」やHP内容についても弊社の表記を真似て作られております。


②山岳業界で知名度のある組織(ココヘリやヤマレコなど)を利用して、ネット上で誇大広告と思われる表記で打ち出している団体があります。


③他者が発見した山岳遭難事案についても、あたかも自分たちで発見したかのように、「発見済」と表記している団体があります。関東甲信越地域において、民間が出動した山岳遭難救助捜索事案については、弊社が把握している場合が多いため、ご不明な点があればお問い合わせください。→現在、私たちが指摘したこの団体のHPは、表記を変えて、「発見済」を「出動」などに変更されています。


④「特定非営利団体」かつ「NPO」と名乗る民間の山岳救助団体にご注意ください。社会的信頼度の高い「特定非営利活動法人」や「NPO法人」の名称を利用したものと思われ、大変紛らわしい団体です。「特定非営利団体」という認定団体はありませんし、一般的にNPO法人とは、特定非営利活動促進法により法人格を得た団体であり、「特定非営利活動法人」が正しい名称です。Non-profit(非営利)として活動することは勿論自由ですが、大変紛らわしく誤解を招きます。


(下: 紛らわしい名称の民間山岳救助団体)

認定NPO法人でない信用詐欺組織の表記

→現在、以下のように変更されていますが、認定NPO法人ではありませんのでご注意ください。また、非営利と書くことで信用を得ようとしていますが、営利団体です。


山岳遭難捜索救助チーム

活動形態:民間の非営利事業 NPO 任意団体


※ ①〜④に挙げた団体例は、すべて1団体に関するものです。私たち長野県内の山岳関係者内において、問題となっている団体です。上記のように頻回にホームページ上での表記も変え、信用し難いものです。これまでこの団体と関わってきた、他の数件の民間救助組織も被害を被っており、特定商取引法12条(誇大広告の禁止)に違反も考えられ、現在弁護士等に相談中です。(2021年5月5日)

行方不明の現場の状況によっては、当チームでは捜索犬を出動させます。

山岳での行方不明者の捜索に使われる犬は、災害現場などでの救助犬とは違う役割を求められます。


災害現場などでは比較的狭く限定された区域の中にいる生存者や不明者を探すことに重きが置かれます。これには様々に充満した人工的な匂いの中から人間を嗅ぎ分け、これに反応するための日常的な訓練が必要になります。


これに対して山岳の行方不明現場では、どこにいるか分からない不明者を山の中を歩き回った末に見つけ出さなければなりません。山中にて長時間行動できる体力匂いに反応し追跡する好奇心ハンドラーとの適切な距離感を保てる行動力が求められます。


よく知られているように犬の嗅覚は、人間の数万倍とも言われています。私達が山の中でよく感じるのは、人間の視覚は必ずしも当てにならないということです。人間の視覚は、網膜に写ったものを脳が認識して初めて記憶として想起されます。逆に言えば網膜に写っていたとしても脳が認識できないことはしばしば起こります。これは私たちが日常的に体験する「見落とし」「見間違い」などが該当します。


例えば、混雑した新宿駅で友人を見つけ出すことはとても難しいと言えます。これと同じように、広大な山の中で数カ月前から行方不明の人間を見つけ出すのは大変難しいことです。また行動そのものに危険や困難さがあるような捜索では、人間の意識は安全管理に集中してしまうため、本来の目的である捜索への意識が疎かになってしまう場合もあります。


これに対して、嗅覚というのは視覚と異なり雑多な情報に紛らわされにくいため、脳に認識される確率ははるかに高いと言えます。さらに、この嗅覚において人間より優れる犬を捜索に使うことは非常に合理的と言えます。しかし実際には、高山に登れる体力が必須であったり、犬では通過が難しい危険個所があったり、数日間にわたる捜索に犬の集中力が続かなかったり、犬に特有の状況を解決せねばなりません。


私たちチームでは、これらの点を総合的に補える犬のトレーニングに力を注いでいます。これには犬の素質、ハンドラーの能力、トレーニングの質のすべてを満たす必要があり、一朝一夕にできることではありません。しかし犬の能力が発揮される現場は必ずやってきます。その日のために、私たちは犬たちとともに日々トレーニングを積んでいます。




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