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山岳遭難行方不明者捜索 捜索犬の利用について

  • 執筆者の写真: 山岳遭難捜索ネットワーク
    山岳遭難捜索ネットワーク
  • 2020年12月4日
  • 読了時間: 2分

行方不明の現場の状況によっては、当チームでは捜索犬を出動させます。

山岳での行方不明者の捜索に使われる犬は、災害現場などでの救助犬とは違う役割を求められます。


災害現場などでは比較的狭く限定された区域の中にいる生存者や不明者を探すことに重きが置かれます。これには様々に充満した人工的な匂いの中から人間を嗅ぎ分け、これに反応するための日常的な訓練が必要になります。


これに対して山岳の行方不明現場では、どこにいるか分からない不明者を山の中を歩き回った末に見つけ出さなければなりません。山中にて長時間行動できる体力、匂いに反応し追跡する好奇心、ハンドラーとの適切な距離感を保てる行動力が求められます。


よく知られているように犬の嗅覚は、人間の数万倍とも言われています。私達が山の中でよく感じるのは、人間の視覚は必ずしも当てにならないということです。人間の視覚は、網膜に写ったものを脳が認識して初めて記憶として想起されます。逆に言えば網膜に写っていたとしても脳が認識できないことはしばしば起こります。これは私たちが日常的に体験する「見落とし」「見間違い」などが該当します。


例えば、混雑した新宿駅で友人を見つけ出すことはとても難しいと言えます。これと同じように、広大な山の中で数カ月前から行方不明の人間を見つけ出すのは大変難しいことです。また行動そのものに危険や困難さがあるような捜索では、人間の意識は安全管理に集中してしまうため、本来の目的である捜索への意識が疎かになってしまう場合もあります。


これに対して、嗅覚というのは視覚と異なり雑多な情報に紛らわされにくいため、脳に認識される確率ははるかに高いと言えます。さらに、この嗅覚において人間より優れる犬を捜索に使うことは非常に合理的と言えます。しかし実際には、高山に登れる体力が必須であったり、犬では通過が難しい危険個所があったり、数日間にわたる捜索に犬の集中力が続かなかったり、犬に特有の状況を解決せねばなりません。


私たちチームでは、これらの点を総合的に補える犬のトレーニングに力を注いでいます。これには犬の素質、ハンドラーの能力、トレーニングの質のすべてを満たす必要があり、一朝一夕にできることではありません。しかし犬の能力が発揮される現場は必ずやってきます。その日のために、私たちは犬たちとともに日々トレーニングを積んでいます。




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