山岳遭難の増加を止めたい!遭難防止のヒントを得るため、登山者のみなさんは遭難しないためにどんなことをしているのか?どんな想いで登っているの?突撃インタビューさせていただき、登山者のホンネをうかがいます。
2019年7月上旬
天気:雨・濃霧
場所:北アルプス 乗鞍岳畳平
登山者: TORU隊長と3人の仲間たち
登山歴:2〜3年以内
登山届:提出なし
山岳保険等加入無し
GPS(YAMAP)使用、地図・コンパス無し
7月上旬、まだ所々に残雪の残る標高3,000M級の北アルプス乗鞍岳です。
雨の降る中、畳平バスターミナル待合室でバスを待つ4人の若者にインタビューさせていただきました。
Q. 今日はどこの山に?
乗鞍の剣ヶ峰に登って来ました。
Q. 登山歴を聞いてもいいですか?
2~3年です。春から秋に10回くらい登ります。(by 隊長)
誘われてついてきました。(by 男性)
私は六甲山、伊吹山を登って今回は3回目です。(by 女性)
Q.登山サークルか何かですか?
学生の頃の仲間です。今はみんな社会人です。
Q. どんな山登りをされますか?
いつも日帰りか山小屋泊です。テント泊もいつかやってみたいです。
Q. 山を登る目的はありますか?
百名山を一応狙ってます。(by 隊長)
来週、富士山に登るんですよ。高さが似てるので、富士山の練習に来ました。(by みんな)
Q. 遭難しない自信はありますか?
遭難はしてもおかしくないです。(by 隊長)
Q. え!!どうして、そう思うんですか?!
前に御在所に行った時に、ロープを掴んだら、切れて5~6m落ちたんです。ロープを何人かで持ったのが悪かったのかもしれません、、崖とかだったらヤバかったですね・・・崖じゃなくて良かったです。なので、いつ滑落するか・・・わからない。(by 隊長)
Q. その滑落の後、どうしたらいいと思いましたか?
ロープを信用しないとか。岩場の浮石に気をつける。手を使って登ったり。
あと1人では山に行かない、1人では滑落したらわからないから。。(by みんな)
Q. ちなみに今日は、気をつけてきたことや、準備してきたことはありますか?
今日はとにかく寒いだろうから、服とか防寒に気をつけてきました。(by みんな)
雪はアイゼンがなくても大丈夫なくらいと調べてから来ました。(by 隊長)
Q. 遭難しないためにいつもしていることはありますか?
みんなで声かけあって登ります。(by みんな)
Q. 必ず山に持っていくものは?
YAMAPです。
Q. 地図やコンパスは?
ないです。
Q. 保険は?
入ってないです。
Q. 登山届は?
あ、出すところは出します…
今回の登山パーティは、登山届未提出、山岳保険未加入でしたが、登山を始めて数年以内の登山者にとっては、実は登山届や山岳保険への関心は薄いと思われます。観光気分で山に入られる方も大勢います。そして、事故があって初めて、その必要性を実感できるものでもあります。しかし、登山歴数年の方の遭難は多いと感じます。山の怖さを知って学びを活かす前に命を落とされる方もいます。遭難から1〜2週間でも生存発見されることもありますが、山岳保険等未加入のために、救助捜索費用を捻出できず早々に捜索を断念されるご家族もいます。
今回、「遭難はしてもおかしくない」と断言した隊長のように、登山に対して漠然とした不安を抱いている方、まるで未知の世界に足を踏み入れ手探り状態で前進しようとしているような登山者は、少なからずいると思います。しかし、経験がないという自覚は大切なことです。ですから、一歩一歩、決して焦らず慎重に、段階を踏んで、経験を積んでいけば良いのです。また、登山を教えてくれる媒体は、たくさんありますから、自分の使いやすい媒体を通して、知識や技術を身につけていけば良いと思います。(ここで媒体は、インターネット、雑誌、登山用具店、講習会、山岳会など。)
そして、万が一に備えての、登山届提出、山岳保険加入です。これらは、事故があってからでは遅いので、他のレジャーやスポーツとは異なるという意識で、提出・加入することをお勧めします。また、最近はGPSのみという若い登山者が多いですが、紙の登山地図も一緒に携帯してほしいものです。広範囲における自分の位置を確認できますし、緊急時のルート変更を考える際にも使いやすく、電池切れや故障の心配もありません。
今回の登山パーティは、みんなで意思疎通を図り、協力し合って山に登ろうとする姿勢には、感心させられました。楽しい経験、危なかった経験も、今後も仲間と共有して、一歩一歩経験を積み、安全登山に繋げてほしいと思いました。
インタビューのご協力ありがとうございました!
※個人情報について、ご本人様の了解のもと、公開させていただいております。
※インタビュー内容は、ご本人等の回答に若干の編集を加えております。ご了承ください。
私たち、山岳遭難救助捜索に関わる者にとっては、登山届提出や保険加入は当たり前のことですが、登山者にとっては当たり前ではない場合があることを理解する必要があります。長年に渡り、「登山届けを出しましょう、保険には必ず入りましょう」などと呼びかけていますが、山岳遭難が減ることはありません。山岳関係者の呼びかけは、遭難予備軍にきちんと届いているのでしょうか。山岳関係者と登山者、登山者間の間でも、感覚のズレが生じていることを理解し、対策を立てる必要があります。今後も、登山者がどのような気持ちで山に向き合っているのかを調査し、遭難予防と対策を考えていきたいと思います。
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