中部地方 某山域3(2025年9月下旬発生)
- 陽介 深澤
- 11月13日
- 読了時間: 3分
1.概要

2025年9月下旬、ある山岳地域における沢筋の岩壁帯で懸垂下降中の滑落事故が発生した。2名パーティのうち1名は翌日に救助され、もう1名は滑落後所在不明となった。
【捜索現場の地形】
豪雪地帯特有の雪渓により、長い年月をかけて磨かれた極めて急峻なスラブ群と硬い岩質。リスやクラックなどは少なく、所々テラスや階段状の棚状の部分もある。浮石、落石への注意だけではなく、岸壁と雪渓の間には深いシュルンドもあり谷底では雪渓崩落への警戒も必要である。また岩壁の植生は低木や草付きが中心で、植生による強固な支点確保、構築も極めて困難である。


2. 発生状況と経緯
【事前計画】
パーティは複数のスラブ帯が連続する沢筋の岩壁帯を登攀し、尾根へ抜ける計画で入山した。
期間:2025年9月下旬
形態:アルパインクライミング
メンバー:登攀者A、登攀者B
予定ルート:尾根筋を経て岩壁へアプローチ → スラブ帯を登攀 → 中腹のテラスでビバーク → 翌日尾根へ抜け下山
装備:50mロープ、携行ボルト、ドリル、小型カム、ツェルト等
【事故経緯】
・スラブ帯上部で行き詰まり敗退を決定
・携行ボルトと細引きで懸垂支点を構築
・周囲に自然支点がなく単点支点で懸垂開始
・下降中に細引きが切断またはほどけ登攀者Aが滑落
・登攀者Bは上部に残置された状態となった
3. 原因分析
【直接原因】
・細引き支点が下降荷重に耐えられず切断または解けた。
【背景要因】
・スラブ地形は亀裂が浅く支点構築が困難
・自然支点の樹木が遠く利用困難
・夏〜秋季は脆い草付きや浮石が多く安定性に欠けた
4. 民間・関係者による捜索活動
【公的機関の初動】
・地上隊は早朝に入山したが雪渓周辺が不安定で接近断念
・航空捜索を中心に複数回の目視確認を実施したが発見できず
・翌日以降の航空巡回に捜索エリアを組み込む方針となる
・民間電波探索装置が未使用だったため関係者が民間事業者へ出動を依頼
【民間捜索隊による捜索(10月上旬)】
1日目
・民間救助関係者が電波探索・高所作業装備などの投入を検討
・ボルト、スタティックロープ、支点構築ギア等を準備
・転落地点の下部のシュルンド内で登攀者Aを発見するも、現場の状況が困難なため、搬送計画の再検討及び日没までのタイムリミットも迫っており、登攀者Aの二次滑落防止のための固定作業を実施し、装備をデポし下山。
2日目
・天候回復を受け民間救助隊が引き上げを実施し、航空機により登攀者Aは収容された。

5. 捜索エリアと発見現場

地形図凡例
入山口:S 下山予定地:G
青線:遭難者が計画していた登山ルート(登り・下り)
赤線:遭難者が実際に歩いたと推定されるルート(下山時)
✖印:遺体発見地点
緑線:民間捜索チームによる捜索範囲

3Dマップ凡例
入山口:S 下山予定地:G
青線:遭難者が登攀後に計画していた下山ルート
赤線:遭難者が実際にアプローチ及び登攀していたルート
✖印:遺体発見地点
黄緑色線:民間捜索チームによる捜索範囲
※赤線:遭難者が実際に登攀していたルートと黄緑色線:民間捜索チームによる捜索範囲が
同じところを歩いているため線が重なってしまい見づらくなっています。



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